新潟県議会2月議会一般質問において、新潟県政の多岐にわたる課題について一般質問を行い、各担当者から現状の評価と今後の対策を問いました。主なテーマは以下の通りです。原子力・防災:柏崎刈羽原発再稼働に対する県民の強い関心や署名運動、災害時の屋内退避シミュレーションのあり方など。農業・米の流通:新潟米ブランドの維持、流通価格の変動への対応、米販売促進策について。福祉・女性支援:女性支援新法の実施状況、生活困窮者支援、保健所や公共住宅の改善策など。各質疑応答を通じ、県民の生活に直結する施策の現状と今後の取り組みが、具体的な事例を交えながら明らかにされています。柏崎刈羽原子力発電所について●牧田東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する新潟県民投票条例の制定を求める直接請求の署名は、署名収集期間が終わった段階で15万筆もの数が寄せられたと聞いており、今後、県に対して請求がなされ、知事が条例案に意見を付して県議会に提出する見込みとなっている。現時点で15万人もの署名が集まっていることに対する知事の率直な所感を伺う。●知事牧田議員の一般質問にお答えします。まず初めに、柏崎刈羽原発の再稼働に関する新潟県民投票条例の制定を求める直接請求についてでありますが、 多くの署名が集まっていることは、柏崎刈羽原発の再稼働問題に対して、県民の皆さまの関心が高まっていることの表れと受け止めております。●牧田原子力規制委員会の原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チームは、今月5日に報告書案を公表した。報告書案では、複合災害への対応について「原災指針は複合災害にも対応できる基本的な考え方を示しており、原災指針の考え方を変更する必要はない。」と結論付けており、また複合災害対策への提案が盛り込まれたが、記載は抽象的であり、一定の被ばくを容認した内容となっている。この報告書案では、複合災害時の国民や自治体の不安の声に応えていないと考えるが、知事の所見を伺う。●知事次に、原子力規制委員会の検討チームの報告書案についてでありますが、報告書案は、屋内退避の運用について、関係自治体からの意見も踏まえてまとめたものであり、屋内退避の解除要件や継続期間の目安、屋内退避中における住民の一時的な外出などの新たな考え方が示されております。しかしながら、本県が意見を提出した、屋内退避の指示が出ている中、住民が一時的に外出する際や、住民の生活を支える事業者が営業を継続する際の留意点などは、十分には示されておりません。現在、原子力規制庁は、最終的な報告書のとりまとめに向けて、関係自治体に意見照会を行っているところであり、県といたしましては、改めて意見を提出することとしております。原子力規制庁には、適切に対応していただきたいと思います。●牧田12月定例会の連合委員会で、福島第一原発事故並みの放射性物質の放出を想定したシミュレーションを実施すべきとの私の質問に対し、知事は原子力規制委員会の山中委員長の発言を引用しながら、「過度な想定はいたずらに不安を煽るだけであり、科学的、合理的な範囲で考えていくべき」とし、福島第一原発事故並みのシミュレーションは実施せず、技術委員会の委員などの有識者にも意見を伺いたいとした。避難委員会でも過酷事故を想定したシミュレーションをすべきとの意見も出されており、改めて福島第一原発事故並みのシミュレーションを実施すべきと考えるが、技術委員会の委員などの有識者の意見と、それも踏まえた知事の所見を伺う。●知事次に、被ばく線量シミュレーションの条件についてでありますが、シミュレーションの条件に関して、県で有識者に確認したところ、「過度な放射線のリスクを考えた避難というのは、実効性のある防災計画であると言えない」とする、原子力規制委員会の山中委員長と同様の認識でありました。このため、福島第一原発事故並みの放射性物質の放出を想定したシミュレーションを行うことは考えておりません。なお、今回県が実施しているシミュレーションは、原子力規制委員会の検討チームが行った、新規制基準を踏まえて現実に想定される事態進展によるシミュレーションの条件を参考に、柏崎刈羽原子力発電所の施設の出力や気象などに合わせた条件で実施するものであり、避難計画に対する理解向上を図ることを目的としております。その結果については、県民に分かりやすくお知らせしてまいります。コメの流通等について●牧田農林水産省が11月に発表したコメの相対取引価格では、新潟県産コシヒカリよりも関東圏のコメが高くなるという逆転現象が発生した。報道によれば、この背景には、小売価格の上昇が続く中、本県はJA系統が上昇前の価格水準で卸業者と契約した分が一定量あるのに対し、24年産米の集荷競争による流通の混乱を受け、在庫に不足感がある業者が高値で米を確保していることが原因の一つと言われている。今後のコメの販売についてJAとともに検討し、生産者の利益を確保することで新潟米ブランドを守っていく必要があると考えるが、知事の所見を伺う。●知事次に、米の流通等についてお答えします。まず、新潟米ブランドの維持に向けた今後の米販売についてでありますが、本県は、全国各地から安定供給を求められており、JAグループをはじめとした本県の集荷業者は、急激な価格変動が生じないよう事前契約の割合を高め、年間を通じた安定供給を基本に、生産コストが上昇する中でも農業者が再生産できる価格での販売に取り組んでいると認識しております。新潟米ブランドを守っていくためには、食味・品質を確保した上で、安定供給していくことが重要であることから、県といたしましては、気候変動リスクに備えた技術対策を徹底するとともに、関係団体と連携し、新潟米の優位性を一層高めるプロモーションを展開してまいります。●牧田農林水産省は本年1月の食料・農業・農村政策審議会食糧部会において、米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針を変更し、政府備蓄米の買戻し条件付売渡しを可能とした。米価の高止まりが続く中で流通量は減少し、生産者からも高値による消費減退を懸念する声が上がっている中、国が創設した政府備蓄米の放出を可能とする基本指針の変更への評価について、知事の所見を伺う。●知事次に、備蓄米の放出への評価についてでありますが、国は、令和6年産の主食用米の生産量が前年よりも増加したものの、円滑な米の流通に支障が生じていることを踏まえ、1年以内の国による買い戻しを条件に集荷業者へ備蓄米を放出し、米の流通を正常な状況に戻せるよう、現行の備蓄運営の考え方を見直したものと認識しております。米価の高止まりが継続し、米の消費が減退すれば、農業者の収入減少に繋がることから、県といたしましては、今般の備蓄運営の見直しは、米の流通を正常な状態に戻し、農業経営の安定化にも資するものであると受け止めております。また、国には、消費者と農業者の双方にとって理解される、生産コストに見合う合理的な価格形成が可能となる環境づくりを、早期に進めていただきたいと考えております。●牧田コメの価格上昇に伴い、県内飲食店が使用するコメについて、県内産から低価格の県外産へのシフトが懸念される。県民や観光客に県産米をアピールし、消費拡大を図る取組の強化が必要であり、県産米使用店舗の認証制度を創設するとともに、当該店舗に対する支援を行ってはどうかと考えるが、知事の所見を伺う。●知事次に、県産米使用店舗の認証制度による新潟米の消費拡大についてでありますが、新潟米は、全国の消費者から高い評価をいただいており、県内の飲食店等では、新潟米の使用自体が店のアピールポイントになることから、自らホームページや店頭等で表示いただいているケースが多いものと認識しております。米価が高騰する状況下においても、県内の飲食店等で新潟米の消費を拡大していくためには、新潟米使用の表示の取組が誘客の拡大につながり、新潟米の使用やその表示の機運がさらに高まることが効果的であると考えております。このため、県といたしましては、県民や観光客などの消費者に「新潟米を食べたい」と思っていただけるよう、本県のトップブランドの双璧であるコシヒカリ、新之助のおいしさをはじめ、様々な特長を持った多様な銘柄など、新潟米の魅力をデジタルを活用して発信するプロモーションを展開することで、飲食店等の取組を後押ししてまいります。女性支援について●牧田女性支援新法の施行に伴い、県は昨年3月に「新潟県困難な問題を抱える女性支援及び配偶者等暴力防止・被害者支援基本計画」を策定し施策を進めている。新法の施行から間もなく1年が経過しようとしているが、県と市町村の体制整備や相談体制、県と市町村、民間団体への研修など人材育成、民間団体の育成など、新法施行前と比較しどのような点が改善されたのか、県としての総括について知事の所見を伺う。●知事次に、女性支援についてお答えします。まず、女性支援新法の施行に伴う体制整備等についてでありますが、県では、令和6年3月に県基本計画を策定するとともに、女性支援の中核となる女性相談支援センターを設置し、これまでのDV中心の相談から、日常生活や社会生活における問題など、より幅広い相談に対応するための相談支援体制を強化したところです。また、新法の趣旨を踏まえ、国、県、市町村、民間団体など関係機関による全県単位での会議の構成員を拡大するとともに、新たに上中下越の圏域別で会議を開催し、関係機関の連携強化や、適切な支援に関する知識の向上など関係者の人材育成に取り組んでいるところです。市町村においては、女性相談支援員の配置も徐々に増え、連携会議の設置検討も進められていることから、県内において、困難な問題を抱える女性への支援に関する取組が着実に広がりつつあるものと認識しております。●牧田女性支援新法の施行1年目における成果と課題を踏まえ、来年度以降、支援調整会議の充実や民間団体の育成をはじめ、どのように取組を強化していく方針なのか、知事の所見を伺う。●知事次に、来年度以降の取組強化の方針についてでありますが、県内において、困難な問題を抱える女性への支援に関する取組が着実に広がりつつあるものの、一層の関係機関との連携強化が必要であると考えております。そのため、県といたしましては、多岐に渡る相談内容を適切に関係機関へ繋ぐためのマニュアルを作成しているところであり、各圏域での会議における広域的な市町村・民間団体等との連携事例の共有や研修により、関係者間のネットワークづくりを強化するとともに、人材育成に努めてまいります。また、女性相談支援員の未配置市町村に対し、女性支援コーディネーターや民間団体の相談員を派遣し、ともに相談業務にあたることで市町村職員のノウハウやスキルを高める伴走支援を行ってまいります。さらに、民間団体など地域における取組が活性化するよう、県政出前講座や各種セミナーを通じて、女性支援に関する県民意識の醸成を図ってまいります。生活困窮者等の支援について●牧田生活保護世帯は増加傾向にある中、生活保護制度と生活困窮者自立支援制度の連携の強化が求められている。県の主管課、地域機関、市福祉事務所、自立支援相談機関など、関係機関の連携は十分に行われているのか伺うとともに、支援調整会議の開催状況と課題について伺う。●福祉保健部長生活保護制度と生活困窮者自立支援制度における連携強化等についてでありますが、両制度は、目的や対象者、事務の性質に違いがある一方で、自立に向けた支援が共通していることから、関係機関が連携し、両制度が継続性・一貫性のある支援を確保することが重要と考えております。これまでも、各地域で、毎月、関係機関による支援調整会議が行われているほか、県では、両制度の具体的な連携方法についての助言や両制度の担当者が参加する研修会の開催等により、連携強化に努めてきたところです。支援調整会議では、支援における情報に本人同意が必要なことから他機関への共有が限られ、早期の支援につながりにくいという課題があることから、生活困窮者自立支援法において、構成員に対し守秘義務をかけることにより、支援関係者間の積極的な情報交換や連携が可能となる「支援会議」の設置が、本年4月から各自治体の努力義務となったところであり、今後、県内での取組を促してまいります。こうした取組を通じ、引き続き、関係機関の更なる連携強化を進めてまいります。●牧田令和2年の社会福祉法の改正により、重層的支援体制整備事業が創設されたが、その背景には、従来の福祉制度・政策と様々な方の支援ニーズとの間にギャップが生じてきたことがある。8050問題やダブルケアなど、個人や世帯が複数の課題を抱えるケースが増加する中で、包括的に相談を受け止め、支援機関のネットワークで対応することが求められているが、県内自治体における重層的支援体制整備事業の実施状況と課題について伺う。●福祉保健部長次に、県内における重層的支援体制整備事業の実施状況と課題についてでありますが、今年度から、新潟市、村上市、柏崎市及び関川村の4自治体で重層的支援体制整備事業が実施されております。これらの自治体では、既存の相談窓口において、包括的に相談を受け止め、社会福祉協議会や自立相談支援機関など、必要な関係機関へのつなぎを行う体制づくりや、ごみ屋敷や引きこもりの子どもを持つ高齢世帯など、複合的な課題を抱える世帯へ関係機関と連携した支援を行うコーディネーターを設置するなど、継続的な支援を行う体制づくりを行っていると承知しております。一方で、事業の開始に当たって、目的や内容について、関係機関との認識の共有に難しさがあるとの声も聞いております。県では、引き続き、制度の目的や必要性を理解してもらうための説明会の実施や、先進自治体の取組の共有などを行うことで、より多くの自治体において、重層的支援体制整備事業の実施を通じて、包括的な支援体制づくりが進むよう取り組んでまいります。●牧田新潟県居住支援協議会は、住まいに困っている方の相談や住まい探しを行う居住支援法人をサポートすること等により、民間賃貸住宅への円滑な入居を促進することを目的として平成25年に設立された。支援状況と課題、今後の取組の方向性について伺う。●土木部長新潟県居住支援協議会の支援状況と課題、今後の取組の方向性についてでありますが、県の協議会は、住まいに困っている方の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するために設立したものであります。支援状況といたしましては、市町村をはじめ、不動産や福祉の関係者に対する普及啓発のための勉強会や、実際に住まい探しを支援している居住支援法人に対して先進事例に関する研修会などを行っております。課題といたしましては、単身高齢者や生活困窮者などの住宅確保要配慮者に対する大家の拒否感が大きいことや、単身高齢者世帯の増加により賃貸住宅の入居に関する相談が増え、要配慮者への支援が十分に行き届かないことが挙げられます。県といたしましては、今般改正された住宅セーフティネット法も踏まえ、要配慮者への支援を強化するため、市町村が主体となる居住支援協議会を設置するよう働きかけるとともに、引き続き県の協議会を活用して居住支援の普及啓発に努めてまいります。●牧田住宅確保要配慮者が県営住宅の入居を希望する場合でも、老朽化で修繕が必要なため入居まで数か月を要する、浴槽や照明器具を入居者が用意しなくてはならない、エレベータ未設置のため高齢者や障害者は上層階が空いていても入居できないなどの声を聞く。県営住宅は、住宅に困窮する低所得者向けの公的賃貸住宅であることから、必要な方が適切に入居できるよう県として対応が必要と考えるが、現状と今後の取組について伺う。●土木部長次に、県営住宅への入居に関する現状と今後の取組についてでありますが、県営住宅では、入居に必要な修繕を行った上で、住宅に困窮する低額所得者を対象に定期的に募集しており、応募者数を満たす住戸は確保できているところです。県といたしましては、老朽化対策として、計画的に外壁改修や屋上防水改修、給排水設備改修などの修繕を行うとともに、エレベータの設置や浴槽設備の整備などの居住環境の改善についても合わせて進めることで、県営住宅を必要とする方々が適切に入居できるよう取り組んでまいります。●牧田愛知県豊明市に所在するUR都市機構の団地では、イケアとのコラボレーションにより室内を改装し、自治会活動や高齢入居者との交流や支援などを居住条件に家賃を値引きし、大学生に入居してもらう取組を進めた。それにより、高齢入居者の介護度の悪化の鈍化や多世代交流による大学生の成長など、様々な効果が生まれていることから、県営住宅の新設や改修の際には、こうした事例も参考としながら取り組むべきと考えるが、現状と今後の取組について伺う。●土木部長次に、県営住宅の改修と運用における現状と今後の取組についてでありますが、県では、昨年度、他の自治体等の取組も踏まえ、様々な分野の民間事業者の方々と意見を交換しながら、県営住宅を対象に、空き住戸を利活用した住民コミュニティの活性化のあり方について検討したところです。この検討結果も踏まえ、来年度から県営住宅の空き住戸の一部を子育て世帯向けに改修する予定としており、これにより、子育て世帯の支援に加え、県営住宅内の住民コミュニティの活性化といった効果が期待できるものと考えております。県といたしましては、他の自治体等の事例も参考にしながら、引き続き、県営住宅の改修と運用に適切に取り組んでまいります。●牧田生活保護制度の相談や申請時に所持金が著しく少ない状態にあるケースや、公共料金などを滞納し支払い期限が迫っているような場合には、社会福祉協議会に対してつなぎとして生活福祉資金の貸付けを申請するケースがあるが、基準に合致していると思われるにも関わらず貸付けを受けられない場合があるとの声を聞く。貸付実績は都道府県ごとに格差もあると承知しているが、人口当たりの件数を全国と比較した場合の本県の状況とそれに対する見解を伺う。●福祉保健部長次に、生活福祉資金の全国と比較しての本県の貸付状況とそれに対する見解についてでありますが、生活福祉資金については、県社会福祉協議会において、国の要綱等に従い、貸付資金ごとに定めている世帯の収入や貸付理由などの条件のほか、返済の見通しなど申請者の個々の状況を総合的に勘案した上で、基準に基づく適切な貸付を行っているものと承知しております。令和5年度の本県における人口10万人当たりの貸付件数は、全国では37番目と相対的に低い状況となっておりますが、各都道府県における社会経済や雇用の状況が異なるなど、様々な要素が関係していると思われることから一概に比較することはできないものと考えております。