2024年12月議会の連合委員会では、柏崎刈羽原発の被曝線量シミュレーションや原子力防災計画の在り方について質疑が行われました。主なやり取りは以下の通りです。被曝線量シミュレーションの想定規模県が実施する柏崎刈羽原発の被曝線量シミュレーションは、福島第一原発事故の1万分の1の放出量を想定。牧田は「福島事故並みや最悪の事態も想定したシミュレーションも必要」と主張したが、知事は「現実的かつ合理的な想定で実施」とし、最悪規模のシミュレーション実施は考えていないと答弁。有識者の意見は聞く意向。防災計画・避難路整備への反映今後の避難路整備や防災計画の検証には、幅広い事故規模のシミュレーションが重要と強調。知事は「国の新基準や規制委員会シミュレーションの条件が現実的」とし、福島事故並みの想定は現時点で実施しないと繰り返した。今後の検討姿勢「県民の不安解消のためにも幅広い想定での検証が必要」と再度要望。知事は技術委員会など有識者の意見を参考にする意向を示した。●牧田 おはようございます。未来にいがたの牧田正樹です。私のほうからは、原子力防災対策について、1点だけですが知事にお尋ねをしていきたいというふうに思います。今議会では、柏崎刈羽原子力発電所で重大事故が起きた際の、被曝(ひばく)線量シミュレーションについて、一般質問や委員会で多くの議論がされました。その中で、県が実施する柏崎刈羽原子力発電所における被曝線量シミュレーションの事故想定の設定についてでありますが、福島第一原発事故を想定したものも実施すべきとの質問に対しまして、知事は、あるいは委員会でもですが、原子力規制委員会の山中委員長が、過度な放射線のリスクを考えた避難というのは、実効性のある防災計画であるとは言えないと発言していることを引用されています。これは、令和5年11月29日の山中委員長の記者会見での発言でありますが、委員長は東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえると、事前に考えておくべき、合理的な事故の規模としては、セシウム 137相当で、 100テラベクレル程度のものであるのが適当であるとの前提で述べており、この数字は福島第一原発事故の 100分の1の放出量に当たります。一方、知事は、本年11月13日の記者会見において、規制委員会の避難、退避に関する検討に基づいて、柏崎刈羽に当てはめたデータを付加してシミュレーションを行うとしています。その条件とは、規制委員会委員長がさきの会見で言った、 100テラベクレル相当としている条件から、さらに 100分の1に下げた想定が示されています。結果として、今回行おうとするシミュレーションの放出量想定が福島事故の1万分の1となっているわけです。そこでお聞きしますが、新潟県地域防災計画では、計画の基礎とするべき災害の想定について、過酷事故を想定すると定めていますが、今回、原子力規制委員会が実施したシミュレーションと同じ条件で実施することに問題がないと考えているのか、知事の所見を伺います。●知事被曝線量シミュレーションでありますけれども、今回、県が実施いたしますシミュレーションは、避難計画に対する県民の皆様の理解向上を図ることを目的に実施するものであります。実施に当たっては、原子力規制委員会の検討チームが今回行った新規制基準を踏まえて、現実に想定される事態進展によるシミュレーションの条件を参考に、柏崎刈羽原子力発電所の施設の出力や気象などに合わせた条件でシミュレーションを行い、その結果については県民の皆様に分かりやすくお知らせしてまいりたいと思います。ただ、今回、原子力規制委員会が行ったシミュレーションは、配管の破断によって原子炉内の水が大量になくなるとともに、電源喪失などにより注水できなくなることで核燃料を冷却できず、著しい炉心損傷が生じる事態を想定しておりまして、県地域防災計画の趣旨に沿うものと理解しています。 ●牧田放出量想定について、知事は規制委員会の屋内退避に関する検討に基づいて、柏崎刈羽に当てはめたデータを付加してシミュレーションを行うということで言われております。これは、なかなか分かりにくいのですけれども、元避難委員会委員の上岡先生のデータを参考にさせていただきますと、今回の放出量の想定は、まず、2012年の事故後に規制庁が福島第一事故の放出量相当で検討をしています。そして、2018年に福島事故の 100分の1の想定をしています。これは、新規制基準による対策が奏功をしている前提ということで 100分の1になっているかと思います。そして今回、今年ですけれども、規制委員会の屋内退避に関する検討チーム、これは能登半島地震を受けてできた検討チームですけれども、ここが行ったシミュレーションの条件は、2018年の想定の、さらに 100分の1になっております。よって、結果的には福島事故の1万分の1の放出量でのシミュレーションということなのですけれども、ちょっとこれ事実関係として知事にお聞きするのはどうかはあれなのですけれども、この数字というか、この考え方で事実関係として間違いないのかお聞きをしたいと思います。●知事恐縮ですが、私も詳細には承知しておりませんので、別に確認していただけますでしょうか。 ●牧田私としては、そういうふうに考えております。詳細はまた担当課のほうに後日、確認をさせていただきたいというふうに思います。それで、今、最初に知事からも御答弁いただきましたけれども、昨年11月29日の山中委員長の記者会見での発言ですけれども、委員長は過度な放射線のリスクを考えた避難というのは実効性のある防災計画であると言えないというふうに言われております。この意味が、私にはちょっとなかなか理解できなくて、私が理解しようとすれば、この防災計画で大丈夫なんだと、実効性があるというために、この程度の放射線量でないと、この防災計画は成り立たないといいますか、そういったふうにも取れるわけです。特定重大事故等対象施設、フィルタベントや、あるいは代替循環冷却設備、これも今度は設置をしなければいけないということで、これが功を奏した場合には、確かに放出の放射線量が下がるというふうに思います。この施設を造ったことによって、過酷事故といいますか、大量の放出が出る可能性というのは確率は下がるというふうに私も思いますけれども、福島並み、あるいはそれ以上かもしれませんけれども、その大きな事故が絶対起きないという保証はないというふうに思います。大地震でフィルタベントが動かせなくなるかもしれませんし、代替循環冷却設備の管が破断するかもしれない、そういったあらゆることが考えられるわけです。そうした場合に、やはりこの特重施設が機能しなかったときの想定をして、最低でも福島並みの放出量、このシミュレーションが必要だと思いますし、今、県がやろうとしているシミュレーションだけではやはり不十分ではないかと申し上げております。この件につきまして、知事の御所見をお願いしたいというふうに思います。●知事福島第一原発事故並みの放射性物質の放出を想定したシミュレーションを実施すべきとの御意見でありますけれども、今回、県が実施するシミュレーションは、先ほど申し上げたとおり、原子力規制委員会が行った新規制基準を踏まえて、現実に想定される事態進展によるシミュレーション条件を参考に、柏崎刈羽原子力発電所の施設の出力や気象などに合わせた条件で実施するものであり、避難計画に対する県民の皆様の理解向上を図ることを目的としています。また、これも委員が御指摘されましたけれども、本会議においても申し上げていますけれども、シミュレーションに関し、原子力規制委員会の山中委員長は、過度な放射線のリスクを考えた避難というのは実効性のある防災計画であるとは言えないと発言しておられます。この点の解釈について、先ほど委員からも御自身のお考えを少しお述べになられましたけれども、私自身は結局、過度な想定というものはいたずらに不安をあおるだけであって、科学的、合理的な範囲内で考えていくべきだということだと理解をしております。県といたしましては、委員御指摘の想定によるシミュレーションを行うことは考えておりませんが、技術委員会の委員などの有識者に御意見を伺いたいと思います。●牧田私は、過度な想定というのは、やはり安全神話のまた復活だというふうに思います。福島事故並みのことが絶対起きないという保証はないと思いますので、それは県が今やろうとしているシミュレーションもやればいいと思いますし、最悪の事態を考えたシミュレーション、これは別に数字を入れ替えればいいことなので、できないわけではないと思うのですよね。技術的には全然簡単にできると思いますので、ぜひそこはやはり何が起きるか分からないという前提で、予防原則の観点からも必要かなというふうに思います。そこで、地域防災計画についてなのですけれども、先ほどもちょっと言ったのですが、この防災計画、原子力対策編には、計画の基礎とするべき災害の想定ということで、発電所からの放射性物質及び放射線の放出形態は、過酷事故を想定するというふうにしています。その過酷事故とは原子力発電所を設計する際に考慮されている事故を上回る事故であって、適切な炉心の冷却又は反応度の制御ができない状態になり、炉心溶融又は原子炉格納容器破損に至る事象をいうとしております。この点からも、やはりこの防災計画からも実効ある避難計画のためのシミュレーションとするには、この計画に定める過酷事故を想定して行うべきと考えます。この点からの必要性ということについて、知事の所見をお伺いしたいというふうに思います。 ●知事先ほどお答えしたとおりですけれども、今回の原子力委員会が行ったシミュレーションは、配管の破断により原子炉内の水が大量になくなるとともに、電源喪失などにより注水できなくなることで核燃料を冷却できず、著しい炉心損傷が生じる事態を想定しており、県地域防災計画の趣旨に沿うものと理解しています。 ●牧田ちょっとなかなか平行線なのですけれども、次の質問です。県では、能登半島地震を踏まえて、今年2月に原子力規制庁に対し、屋内退避など原子力災害対策指針の見直しを求めていると承知しており、そうであれば、今の新潟県地域防災計画で問題がないかについて検証が必要というふうに考えます。また、国との協議のテーブルが整った避難路整備の協議も今後、本格化していくと思われます。そうした中で、被曝線量シミュレーションは、重要な役割を果たすと考えます。その被曝線量シミュレーションの内容についてですが、令和4年9月にまとめられた新潟県原子力災害時の避難方法に関する検証委員会、いわゆる避難委員会の報告書によれば、シミュレーションの留意点として、シミュレーション結果が示すオーダー、過去数値の桁数、程度から国、県、市町村がとるべき行動がどれくらい違っているのかを把握することが重要であるというのが記載をされています。それから、拡散シミュレーションの条件ということで、二つの放出規模の条件が挙げられています。一つが、福島第一原子力発電所事故規模、そしてもう一つが、新規制基準の適合性審査で想定する格納容器破損モードに対してセシウム 137の放出量が 100テラベクレルを下回っていることを確認するとされていることを踏まえた規模です。繰り返しますが、この今、二つめの規模というのは福島事故の 100分の1の放出量ということになります。そこで、お聞きしたいと思うのですけれども、これから行われる避難路の整備方針や防災計画の検証などに資するためにも、避難委員会報告書にもある福島第一原発事故並みの放射性物質の放出を想定したシミュレーションも実施すべきと考えますが、この点から知事の所見をお伺いいたします。●知事また同じ御質問を頂いていますので、同じお答えになりますけれども、シミュレーションに関しては、山中委員長の過度な放射線のリスクを考えた避難というのは実効性のある防災計画とは言えないと発言していることも踏まえまして、県といたしましては、委員御指摘の想定によるシミュレーションを行うことは考えておりませんが、技術委員会の委員などの有識者にも御意見を伺いたいと思います。 ●牧田最後の質問をしたいというふうに思いますけれども、委員会でもやりましたが、来年6月には6号機も燃料装荷すると東京電力のほうは言っておりまして、これ自体、認められるものではありませんが、6、7号機合わせての放出を想定することも必要かもしれません。そういった議論が委員会でもされております。国は国としてシミュレーションを行っているわけですけれども、やはり県としては、もう一回リセットをして、こういったあらゆる想定、2号全部両方動いた場合とか、そういう場合も含めて、やはり幅広く検討すべきではないかと思いますが、最後にお聞きしたいというふうに思います。 ●知事現在、県としては想定しておりませんけれども、技術委員会の委員などの有識者にも御意見を伺いたいと思っています。 ●牧田なかなかやっていただけるという答弁は頂けませんでしたが、やはり県民の不安を払拭(ふっしょく)するためにも、そういった安全神話ではなくて、きちんとやはり可能性としてはあるわけですから、そういったシミュレーションもぜひ技術委員会のほうのお考えも聞くということで、ぜひそれもしていただきたいと思いますが、その中で、ぜひこの過酷事故になった場合のシミュレーションについても、ぜひやっていただけるようにお願いをいたしまして、私の質問を終わっていきたいと思います。ありがとうございました。